HOME > 達人の一言 > vol.2 「病気や怪我には、意味があります」
「病気や怪我には、意味があります」
病気や怪我、身体の不調などは、
その方が生きてこられた歴史です。
「どうしてこうなったんでしょうか」
治療に来られると、みなさんそう訊かれますが、
原因の特定というのは、
ですから、実は、とても難しいことなのです。
その方の生活のすべてが、「原因」なのですから。
たとえば、年配の方が右の膝を悪くされて
病院へ行ったら、「もう年ですから」と言われたそうです。
おかしいと思いませんか?
「でも先生、左の膝も、同じ歳なんですけど」
そう言えばよかったのに、と、笑ったことがあります。
ある人がそれまでかかわってきた
空間・時間・社会的地位などすべての環境、
そこから与えられる刺激(ストレッサー)に
対応するように、身体は変化していきます。
このストレッサーを、受け取る側から捉えたときの
主観的な負荷や重圧のことを、
「ストレス」と呼ぶんですね。
本来は、工学の用語です。
ある人が新しい環境に入ると、
身体は、そこから与えられる刺激に
対応できるようになります。
たとえば、デスクの配置や、受付などの業務で、
いつも右側から話しかけられる、
あるいはいつも右側を向いて仕事をすることが
多い環境だとしましょう。
自分ではわかりませんが、
身体は、その「右向き」の環境に対応できるよう
24時間態勢で準備するようになってしまいます。
これによって、その特定された狭いエリアでの活動は
とても楽になりますよね。
そういう、身体の癖ができるのです。
その方が、たまたま映画館へ行ったときに、
右端の席に座ったとします。
スクリーンは左側になります。
2時間の上映時間中、ずっと左を向いている。
筋肉をいつもと違う方向に使い続けますよね。
それで、映画を見終わって、腰が痛くなったりという
なにか身体の不調が出てくることがあります。
このように、
実は新しい環境に対応できるようになったときに、
怪我は起きるのですね。
武道家の内田樹先生の例もそうです。
この方は、右膝の性能が非常に良い。
ですから、その右膝が対応できる技をどんどん作ってしまう。
ご本人としては、気持ち良いんです。
それで、その動作ばかりを繰り返される。
それが、右膝の故障に繋がりました。
生活のすべてが原因であるということは、
環境を変えると、良くなるということです。
でも、出世して社会的責任が増えたことによる
ストレスが原因だから減らしなさい、と言われても、
どうしようもないことがほとんどですよね。
それで、身体が不調を訴えるのです。
身体が悪くなって入院すると、
環境が変わりますでしょう?
「あのひとは頑張りすぎた」と
社会的評価はそのままに休養できる。
身体が、身体に悪いことを選択するはずがありません。
身体には免疫というシステムがあって、
外部から入ってきたものに対しては
抗体を作って、守ることができます。
でも、自分の中で起こることについては
自分で解決することはできません。
よく、「時間があれば〜できるのに」と言いますよね。
あれは、現実には、時間がないからできない、
実現可能性がないことを言っているんです。
もちろん、諦めるという方法もあります。
でも、諦めるということを選べないこともある。
自分が頑張らないと家族の生活が……と
思いつめているような場合ですね。
実際には、自分が頑張れなくなったら、
家族の方から「ちゃんと頑張るから」と
言ってくれるものなのですが、
そのことは、なかなかわからないものです。
その「変わらない環境」に対応するために
身体が反応して、
怪我や病気を選択するのです。
怪我や病気の「原因」とされる
免疫の低下、集中力の欠如、感覚の鈍化、
すべてが、脳ではなくて、身体が選択したことですね。
医療に携わるものは皆知っていると思いますが、
腰痛ひとつにしても、100も200も「原因」があります。
それらのすべてが、シンクロしています。
その、どれかひとつでも外して、
99(あるいは199)になれば、
状況を打開するきっかけとなります。
怪我や病気、身体の不調は、身体が発したSOSです。
その機会に、ご自身を取り巻く環境を
みつめなおしてみてください。
どれかひとつでもいいから、外してみる。
たとえばこれを読まれている方が
毎日頑張っているお母さんだったら、
ゴミ出しやオムツ替えをご主人に任せてみてください。
いくらご主人が「俺は料理は苦手だから」と言っても
もしあなたが頑張りすぎてしまって腰痛になれば、
どうせ料理をせざるを得ない環境になるのですから。
あなたもまた、周囲のひとにとっての「環境」の一部です。
あなた自身が変わることで、
まわりもまた、変わりますよ。